味を大切に、お客様を大切に。クオリティを高めることが、成功への近道。 株式会社バルチックシステム 代表取締役社長 吉野幸則様
 
涙の再出発 味を大切に、お客様を大切に
 1992年。一度はどん底にまで沈みこんだ吉野社長でしたが、そこから見事な復活劇を果たします。
  初心にかえり、ワゴン車で元のカレーを売り始めたバルチック。ていねいに作りこんだカレーは、一度は離れてしまったお客様を、再び惹きつけ始めます。
「この時期は、元からのスタッフが、ほとんど無給で仕事を手伝ってくれました。本当にありがたかったですね。甘言に迷わされず、人を見極めることの重要さを改めて学びました。彼らには、何としても報いたいと感じました」
  おいしいカレーを、適切な値段でお客様に提供する。それが単純ながらも極めて重要なことを、吉野社長は強調されます。自分で吟味した素材を自分で調理し、信頼できるスタッフに託して販売する。その先には、バルチックカレーを愛し、信じてくれるお客様がいる。その方程式こそが、利益を上げる一番の近道だと確信したのです。この思いは、次第に吉野社長の信念へと変わっていきます。
 
常に新しいアイデアで勝負! 出店に至る長い道
 新たな出発後、地道に、そして着実に商売を続け、少しずつ信頼を回復したバルチックカレー。やがて売上げも旧来に復して、社員に対して給料を出せるようにもなりました。
「もう、とにかく堅実に。それだけを念頭においていました。お客様がまた増えはじめ、利益が増え初めても、しばらくはその姿勢を崩さずに、着実な運営をすることを心がけました。とにかくきちんとカレーを作って、丁寧に売る。その繰り返しがバルチックカレーの基礎となったのです」
  地道な販売である程度の体力をつけた吉野社長は、次第に新しいアイデアを形にすることで、さらなる発展への足がかりを築きます。パチンコ店との契約による定期的な巡回販売、イベントや撮影のロケ弁当など、オフィス街での販売以外の新基軸で、次々と売上げを伸ばす手法を試みていったのです。
「新しい商売のアイデアは、従業員との会話から生まれました。例えば、若い社員が休日にパチンコに行っているという話から、中には食事を抜いてでも一日中やっている人もいることを聞き、『ならばこちらから売りに言ったらどうだろう』と。そこですぐに数軒のパチンコ店に電話してアポイントを取り、試食をしてもらってお店での販売許可をもらいました。そういう意味では、社員とのコミュニケーションは、貴重なアイデアの宝庫だと言えるでしょう」  
  着実に売上げを伸ばし続ける中、「そろそろお店を出せば?」と知人から勧められた吉野社長。創業当時は初期投資の節約のためにワゴン車による販売でスタートしたものの、気がついてみればバブルも終焉して、店舗も安価で借りられる状況になっていました。
「車の維持費と店舗の賃料を単純計算で比べてみると、それほど差はなく、むしろ店舗の維持の方が安いぐらいでした。そこで思い切って、店舗を持つことにしたのです」  
  ここに、バルチックカレー1号店が誕生します。
 
わずか5坪の1号店から、 フランチャイズ化への道が始まる
 1997年。バルチックカレーの第1号店がオープンしました。
「店舗とはいっても、わずか5坪。しかし、テイクアウトを主眼においての出店だったので、特に問題はありませんでした。あくまでもワゴン車による販売の延長線上だったのです。初日は、300人以上のお客様がご来店されて大盛況。順調なスタートでした」
  吉野社長が出店を決意したのは、創業当時からのスタッフのためでもありました。当時は若かったスタッフも、創業から6年経った頃には年齢を重ね、結婚する人間も出てきました。そんなスタッフに過酷な路上商売ではなく安定した店舗商売をさせてあげたいという思いも、移動販売から店舗販売への移行に踏み切らせた理由でした。  
 そして1年後、吉野社長にさらなる転機が訪れます。
「ある雑誌で、成長しそうな事業に融資するという企画を実施していて、応募してみました。すると、その事業計画が認められて、1億円を超える融資金が集まりました。その時私が提出したのが、バルチックカレーのフランチャイズ化の事業計画だったのです」
  かくして、バルチックカレーはフランチャイズ化への道を歩み始めたのです。
 
そして、世界へ広がる バルチックカレー
 バルチックカレーのフランチャイズ化が始まったのは、1998年のことでした。最初は東京都内を中心に店舗を展開。物流システムの構築に伴い、全国展開へと発展していきます。  
 そして2001年には、九州らあめん「どんたく」、函館朝市「いくら屋」など、新業態の展開も開始。また、香港にもバルチックカレーを進出させるなど、その勢いは留まることを知りません。
「中国でビジネスをしたいという考えは、バルチックカレーを始める以前から持っていた夢。バルチックカレーという業態でそれを実現するとは思いませんでしたが、それもありかな、と。現在は香港に2店舗ですが、今後は展開を広げ、中国にバルチックカレーを浸透させるのが目標です」  
 ワゴン車から始まったバルチックカレーは、今や約50店舗を数える大艦隊に成長しました。吉野社長率いるバルチック艦隊は、今後もさらなる発展を目指します。
ショップ運営の要
 
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